7月10日、音楽が描く“静かな衝動”と“崩れかけた感情”の3篇
Harry Styles「Sign of the Times」MV公開(2017年7月10日)
2017年7月10日、世界が「Harry Styles」という“ソロ・アーティスト”に本気で向き合うことになった日。
One Directionのイメージを引き継ぎつつも、壮大で美しく、そしてどこか悲しげなロックバラードが私たちの前に現れた。
MVでは、彼が空を飛ぶ。しかもワイヤー感のない“真顔での飛行”。
大自然のなかを舞うその姿は、何かから逃げているようでもあり、世界を俯瞰しているようでもある。
歌詞にある「止めるべきなのに、止まらない」という静かな衝動とリンクする映像だ。
あれからソロとして確固たる地位を築いたHarryだけれど、この曲の持つ“初期衝動”と“痛み”は色褪せていない。
空を飛びながら、地に足がついている。不思議な矛盾を成立させるアーティストは、そう多くない。
Bebe Rexha「I’m a Mess」MV公開(2018年7月10日)
タイトルからして正直すぎるBebe Rexhaの「I’m a Mess」。
“メンタルが散らかってるけど、それが私”という開き直りは、ある意味、最も健全な自己肯定のカタチかもしれない。
MVは精神病棟を模した白い空間で進行する。
診察台、拘束着、鏡。どれも比喩的でありながらリアルに響く。
そしてその中で彼女は言う──「私は壊れているけど、それでいい」と。
完璧じゃなくていい。壊れたまま、好きな音楽に頼って生きていく。
「I’m a Mess」は、“音楽と共にある不完全な私”を肯定する賛歌だ。
Tom Odell「Another Love」YouTube再生1億回突破(2020年7月10日頃)
「泣けるピアノ曲」と聞いて、この曲を思い出す人は多いはず。
Tom Odellの「Another Love」は、2013年のリリース当時から既に泣かせにかかっていたけど、
2020年7月頃にYouTubeで再生回数が1億回を突破し、再注目された。
この曲のすごさは、“泣ける”だけじゃない。
ピアノ一発、歌声、そして絶妙な“間”で、聴き手の感情をじわじわと削ってくる。
まるで、何もされていないのに刺さるような、音のナイフ。
MVも美しい。光が滲む部屋の中で、静かに感情が崩れていくTomの姿は、観ているこちらまで呼吸が浅くなる。
コメント